健康保険法等改正 2026年8月1日施行:出産費の現物給付化・OTC類似薬の保険外化・後期高齢者保険料見直し
令和8年法律第31号(2026年6月5日公布)— 施行まで22日
この改正が影響する人
- 👶 妊婦・産後の方:出産費の窓口負担がなくなる(現物給付化)
- 💊 市販薬と競合する処方薬を使っている方:一部が保険外へ
- 💹 75歳以上で金融所得がある方:後期高齢者保険料が上がる可能性
- 👶 未就学児がいる国民健康保険加入世帯:均等割の軽減が拡大
「健康保険法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第31号)が2026年6月5日に公布され、8月1日から施行される。 衆参両院の厚生労働委員会での審議(2026年4〜5月)を経て成立したこの改正は、 少子高齢化の進行による医療保険財政の持続可能性確保を軸に、出産・育児、OTC薬、後期高齢者医療、子育て支援の4分野にまたがる。
出産費の現物給付化
出産育児一時金(上限50万円)を産婦に現金支給。費用は医療機関が自由設定のため、一時金引き上げ分を費用が吸収してしまう構造。
改正後正常分娩費用の標準的な部分を保険者(健康保険組合・協会けんぽ等)が医療機関へ直接支払い。妊婦の窓口負担がゼロになる仕組みへ。定額の現金給付(出産時一時金相当)も別途全妊婦に支給。
⚠ 当面は従来の現金給付方式も経過措置として選択可。移行準備が整っていない施設は旧方式継続も可。
OTC類似薬の保険外療養化
市販薬(OTC)と同成分・同効能の薬であっても、医師が処方すれば健康保険が適用されていた。
改正後市販品との代替性が特に高い薬剤(鼻炎・胃腸薬・湿布など一部)を保険診療から段階的に外す。処方箋で購入した場合は自費。
⚠ 対象薬剤は厚生労働省告示で順次指定。医師の処方でも自費になるケースが生まれるため、かかりつけ薬局への確認推奨。
後期高齢者の保険料に金融所得を反映
後期高齢者医療保険料は年金・給与所得等を基に算定。株の配当・売却益(申告分離課税選択分)は対象外だった。
改正後確定申告で申告した金融所得(配当・株式譲渡益)を後期高齢者医療保険料の算定所得に加算する。高所得の後期高齢者の保険料が上昇。
⚠ 申告分離課税を選んでいる場合に適用。源泉徴収のみ(確定申告なし)の場合は影響なし。NISA口座は非課税のため対象外。
子育て世帯の国民健康保険料負担軽減
世帯の所得・人数に応じた保険料。子の数が多いほど均等割部分の負担が増える構造。
改正後未就学児に係る均等割の軽減幅を拡大。子育て世帯の実質的な保険料負担を引き下げる。
⚠ 市区町村の国民健康保険が対象。協会けんぽ・健保組合は別の子育て支援策が講じられている。
医療機関の業務効率化・勤務環境改善支援
診療報酬請求・マイナ保険証対応など医療機関のDX化コストが増大する一方、診療報酬での手当が限定的。
改正後業務効率化に取り組む医療機関への支援措置を保険給付体系の中で整備。医師・看護師の勤務環境改善に関連する加算も見直し。
⚠ 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構法(2026年10月施行)と連動し、請求データの標準化・デジタル化が加速する。
背景:なぜ今この改正か
審議の中で厚生労働大臣は「少子高齢化の進行により、社会保障制度の支え手不足が深刻化する中で、 将来にわたり医療保険制度を持続可能なものとするためには、現役世代の保険料負担上昇を抑制しながら、 全世代が納得感を持てる制度改革が必要」と説明した。
特に出産費の現物給付化については、「出産育児一時金の支給額を引き上げても出産費用もそれに合わせて上昇してしまい、 負担軽減につながらないという課題があった」(参議院厚生労働委員会、2026年5月)と従来の限界を明示。 医療機関への直接支払いに切り替えることで費用の透明化と標準化を図る。
一方で産科医療提供体制の危機も議論になった。全国335の医療圏のうち、産科診療所がない医療圏がすでに84に上り、 新制度への事務負担増を懸念する施設が分娩から撤退する可能性が指摘された。附帯決議では「周産期医療提供体制の確保」と 「丁寧な移行支援」が政府に求められている。
読むときの注意
- 本記事は e-Gov 法令API から取得した法令全文(健康保険法 2026年8月1日施行版)と NDL 国会会議録API の審議記録(2026年4〜5月、衆参厚生労働委員会・本会議)を基に構成した。 政府・厚労省の公式広報や保険者からの通知を必ず確認のこと。
- OTC類似薬の保険外療養化は対象薬剤が厚生労働省告示で順次指定される。8月1日時点の対象範囲は 施行直前の官報告示で確認すること。
- 後期高齢者保険料への金融所得反映は確定申告を通じた所得把握が前提。 NISA口座の非課税運用分は対象外であり、申告不要制度(源泉徴収のみ)を選んだ場合も影響を受けない。
- 出産費の現物給付化の実施時期は施設ごとの準備状況により異なる。 当面は経過措置として従来の一時金方式も選択できるため、 出産予定の方は分娩施設に対応方針を確認することが重要。
データ出典
| 使用データ | 出典 |
|---|---|
| 健康保険法(令和8年8月1日施行版) | e-Gov 法令API — lawid: 211AC0000000070_20260801_508AC0000000031 |
| 国会審議録(衆参 厚生労働委員会・本会議 2026年4〜5月) | NDL 国会会議録検索システム API |
※ データは各機関の公開統計を当サイトで収集・加工したものです。最新値は各出典元でご確認ください。