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BIS 実質住宅価格 18カ国比較──カナダ +102%・日本 +45%・ドイツ +30%

BIS(国際決済銀行)が集計する実質住宅価格指数で、2010年Q1を基準に各国の累積上昇率を比較。インフレ調整済み、四半期データ。先進国でも市場の温度差は大きい。

実質住宅価格の長期推移(2010Q1=100, 日本・米国・カナダ・ドイツ)

出典: BIS Residential Property Prices via FRED。インフレ調整済み。各国の基準年は元データ異なるが、2010Q1 に再正規化。

「住宅価格の半世紀」のグローバル分岐

2010年Q1を 100 とすると、2025-10 時点で日本は 145、 ドイツは 129、米国は 156、 カナダは 200。同じ「先進国の住宅市場」と語られても、累積上昇率の差は2倍以上ある。

カナダはバンクーバー・トロントを中心とした移民流入と低金利の組み合わせで、住宅価格が 2倍超に。 対する日本は人口減少と長期デフレを反映した穏やかな上昇にとどまる(バブル後の長期回復過程)。 ドイツは 2010年代後半〜2022年の急上昇局面を経て、金利上昇による軟化局面へと転じている。

2010 → 現在 (X) vs 2020 → 現在 (Y) の上昇率

右上=「過去10年も、ここ5年も値上がり続けた国」。右下=「過去10年は上がったが、最近は調整」。左上=「ここ5年で急騰」。

3つの「住宅市場の世代」

  • 長期上昇継続組(右上): カナダ・スイス・米国・ニュージーランド。 リーマンショック後の超低金利・移民流入・グローバル都市化が住宅価格を継続的に押し上げた。 直近の金利上昇でも下落幅は限定的。
  • パンデミック期急騰組(左上): ポルトガル・スペイン・オランダなど欧州の一部。 2010年代は穏やかだったが、2020〜2022年のコロナ期需要急増で価格水準が一気にジャンプした。
  • 調整入り組(右下〜中央): ドイツ・スウェーデン・韓国。 長期では上昇したが、2022年以降の金利上昇で頭打ち〜軟化。実質ベースで前回ピークから 5〜15% 下落している国もある。
  • 独立した動き(外れ値): トルコは累積 +119% という外れた数値。 実質値とはいえ、超高インフレ環境での「住宅をインフレヘッジに使う」需要を反映している可能性が高く、他国と単純比較できない。

2010基準 累積上昇率(実質, %)の上位10カ国

2010Q1から最新四半期までの実質ベース上昇率。トルコは外れ値として最上位だが、超インフレ環境の影響に注意。

日本のポジション──「上がってない」のは健全なのか

日本の +45%(15年)は欧米と比べれば控えめだが、 バブル崩壊後の長期低迷を経た「正常化」と読むこともできる。実質ベースなのでデフレ期の下落は除いており、 実態としては全国平均で物価並みに緩やかに値上がりしてきた市場。都心の高級マンションは突出している一方、 地方の戸建ては逆方向に動いており、「日本」を一括りにできない。

イタリアの -24% はマイナス傾向(実質下落)。 南欧経済の停滞と人口減少を反映し、欧州の中で唯一明確に「住宅が安くなった国」になる。

政策含意

  • 金融政策の波及スピード: 同じ Fed/ECB 利上げでも、住宅価格への波及はオーストラリア・カナダで早く、ドイツ・日本で遅い。住宅ローン構造(変動 vs 固定)と銀行の貸出基準の差が効く
  • 移民・人口動態の重み: カナダ・豪州の住宅価格上昇は、住宅政策よりも移民政策の結果でもある。住宅供給を増やさないまま人口を増やせば、価格上昇は不可避
  • 住宅価格の「正常な水準」は存在しない: 国際比較で「過熱」「割安」を語る前に、賃料・所得・人口の3変数で正規化する必要がある

限界と留保

  • BIS データの基準年と集計手法は国により異なる: 一部は商工会議所調査、一部は登記データ、一部は不動産業者調査。「実質住宅価格指数」と銘打っても完全な統一基準ではない
  • 2010Q1 を基準にしたのは便宜的選択: リーマン後の安値圏に近いため、上昇率が大きく出やすい。1995年や2000年を基準にすると順位が大きく変わる
  • 実質値はCPI 基準: CPI の構成が国により異なるため、実質ベース上昇率の国際比較には限界がある
  • 全国平均で、地域差を均している: 国内格差(都市 vs 地方)はこの数字に表れない。日本ならば東京と地方都市の動きは大きく違う
  • 季調済みではない国もある: BIS の系列は基本的に年率換算前の四半期データ。短期的なノイズは含まれる
  • トルコの外れ値は除外して読むべき: 名目で年率 50%+ のインフレ下では、実質計算式が破綻しがちで、他国と並べることに無理がある

データ出典

使用データ 出典
BIS Residential Property Prices BIS / FRED (Q{XXX}R628BIS)

※ データは各機関の公開統計を当サイトで収集・加工したものです。最新値は各出典元でご確認ください。